管理費滞納対策|はじめにHEADLINE

はじめに

分譲マンションの区分所有者は、同じ建物を資産として共有しています。また多くの場合、居住者同士として、コミュニティを形成しています。そのような関係を良好に維持するためには、人間関係を円滑にすることは欠かせません。

そして、そのような人間関係を維持する最も大きな要素は、区分所有者としての約束事をきちんと果たすということに他なりません。決められたことを決められたように果たすことが、最も初歩的でしかも重要なことです。

区分所有者として、コミュニティの一員として、最初に果たすべき約束事は、管理費等をきちんと納めることです。各自に割り当てられたその資金の支払いを滞らせるようでは、区分所有者としてマンション管理組合の一員でいる資格はありません。

ここでは、特に管理組合の役員の方に向けて書かれています。滞納された管理費を回収するのは、管理員でも管理会社でもなく、管理組合が主体となって取り組まなければならないことだからです。特に役員の方には、決して愉快な思いをすることはないであろう作業にあたらなければなりません。

滞納の分類と基本的な心構

1.滞納の分類

滞納には、幾つかのパターンがあります。滞納する人の個々の状況は全て違いますから、滞納者の数だけパターンがありますが、幾つかに分類することは可能ですし、回収するという点から見て、分類することが必要です。ここでは、滞納の分類を支払期日から経過した時間によって分けます。支払期日を過ぎて、次の支払期日が到来していないものを「初期滞納者」と呼ぶことにします。そして滞納が3ヶ月分までのものを「中期滞納者」、4ヶ月以上に及ぶものを「長期滞納者」と呼びます。滞納対策として、滞納者がどのような形態の滞納をしているか、それによって督促の仕方が変わるのも事実です。例えば郊外型・ファミリータイプのマンションと、リゾートマンションとでは督促の仕方が変わりますし、また、所有しているのが個人の場合と法人の場合とでも異なります。それらの場合については、最後にまとめて特徴を押さえることにします。ここでは、通常のファミリータイプのマンションで、区分所有者がそのマンションに居住している場合を念頭に置いて話しを進めることにします。


2.基本的な心構え

納に対して、督促する側、すなわち管理組合として持っていなければならない基本的な心構えについてお話しさせていただきます。督促する場合に、役員の方が肝に銘じておくべきことは、3つあります。

@管理費を払えない人はいない
A絶対に諦めない
B嫌な気分にさせられることを覚悟する


順次ご説明いたします。

@管理費を払えない人はいない

管理費を支払う義務があるのは区分所有者ですが、区分所有者は、少なくとも過去において分譲マンションを買うだけの資力を持っていた人です。そして現在も、資産としてマンションを持っている人です。そのような人の中で、管理費を支払えない人などいません。

昨今の経済的不況で、個人の資産状況が悪化したという人は多いと思いますが、それでも未だにマンションを持っているわけですから、月々数万円の管理費が払えないわけがありません。そのような方は、要するに毎月のいろいろな支払の中で、管理費を後回しにしているに過ぎません。

私が以前処理したケースで、半年間滞納していた方がいました。私は滞納し始めて半年経った後にそのマンションの管理を担当したのですが、直ちに対処して、以後は必ず期日に支払ってくれるようになりました。銀行口座からの口座振替で支払うのですが、口座に残高不足の場合でも、銀行振込で支払ってくれます。管理費の支払いをそのくらい重要に考えていただけるようになるまでは結構大変だったのですが、それでもそのような状態になって下さいました。携帯電話のメールアドレスを聞いておいて、支払日の前日と当日に、支払のお願いのメールをして、支払日を忘れないようにしてもらったりしました。その人は、管理費支払の重要性を認識してくれたわけです。その結果、色々な支払の中で、管理費の順位を一番上か二番目くらいに上げてくれたわけです。

その方について後日談があります。私どもの事務所では、管理委託を受けたマンションについて、新聞代の集金を代行しています。朝日新聞とか、読売新聞の集金です。近所の新聞屋さんと契約して、私どもの事務所が新聞代の集金をするわけです。理由は、マンション内への外部の人(新聞やさん)の出入りを少なくしたいことと、管理会社としても個々のお宅を訪問して集金することで、入居者との面識が増えること。そして新聞の集金をすることで、マンション内のパトロールを同時に行うことになるからです。それはさておき、前述の滞納していた人は、ある新聞を取っていました。その方は現金による集金ではなくて、口座振替で新聞代を支払っていましたから、私がご自宅に新聞代の集金に伺ったことはありませんでした。しかしある日、新聞店の店主が言うのには、その方は新聞代も滞納していたのです。「会田さん、お宅のマンションにAさんっていう人がいるでしょ?どういう人?」店主は数ヶ月分が滞納されているとのことでした。それも管理費はきちんと支払うようになった後の分です。私としては、もちろん管理費の一件は言うわけがありません。しかし心の中では、やっぱりな...と思いました。月々の支払にルーズな人は、何に関してもルーズなのだと思いました。管理費に関しては、支払順位を上げてもらいましたが、新聞代はそのままだったのです。その結果、管理費は銀行振込で支払うにも拘(かか)わらず、新聞代は払わない。そういうことになりました。この例からも分かるように、要するに滞納は、支払う側の気持ちの持ちよう次第です。

支払うべきものだからきちんと支払ってもらう。それだけのことですし、特にお金に関することはルールを単純にして、それを平等に実行しなければなりません。厚かましい人は、さんざ滞納したあげく、割引を要求したりします。管理組合としては絶対に応じるべきではありませんし、むしろかかった手間代を遅延損害金として請求すべきです。そのような仕組みにすることで、他の人にも管理費の重要性が分かってもらえるようになります。自動販売機を相手に値引き交渉する人がいないように、管理組合には交渉も値引きもありえないことを思い知らせる必要があるのです。

管理費を滞納する人にはさまざまな事情があります。中には、確かにもっともだなと思えるような事情を抱えている人もいます。しかしそのような場合でも、免除はもちろん、期日延期もするべきではありません。後で述べるように、実際には、期日を延期したり、支払いを猶予したりする場合もあります。しかしそれは全額回収が前提で、それを達成するための手段ですから、ただ可哀想だからという理由で免除や猶予はすべきではありません。管理組合の役員の方には、是非、この点を肝に銘じて管理費の回収にあたっていただきたいと思います。

A絶対に諦めない

滞納された管理費の回収は、全額プラス遅延損害金であるのが原則です。免除や割引はもってのほかです。役員の方にとっても、管理費は自分のお金ではありません。管理組合という区分所有者全員のためのお金、要するに他人のお金です。他人のお金の管理をしているに過ぎませんから、免除したり、割引をする権限はありません。とにかく滞納管理費は全額回収、遅延損害金も必ず取るとお考え下さい。そして何より、絶対に諦めないことが大切です。どんなことをしても支払ってもらう。それが当然なことですから、そのためにあらゆることをするわけです。

例えば8月31日が支払期日だとします。その場合、8月31日の24時までに支払えばいいのだと考えれば、実際に支払ったのが9月2日である場合、滞納者は管理費を2日間運用して利益を上げることができるわけです。その利益は、管理組合の負担のもとであげられたのですから、当然、滞納者には不当利得の利益があります。その利益は管理組合に還元してもらうべきです。一日でも滞納したら延滞金(遅延損害金)を支払わなければならない。そのような仕組みを持つことも必要です。それは実際に発生してしまった滞納管理費の回収には直接役立ちませんが、管理費の滞納が発生しないような仕組み作りのために必要なのです。

日頃から管理組合としては、こういう仕組みで滞納管理費を請求することにしていますということを組合員に周知することで、潜在的滞納予備軍が顕在化することを防ぐ効果があります。遅延損害金の計算書は、当事務所のホームページでも無料で公開していますので、まだ使っていない方は、参考にして下さい。エクセルデータがそのままダウンロードできますので、どなたにでもお使いいただけると思います。私自身、エクセルの操作は得意な方ではないのですが、それでも簡単に作れました。その程度の仕組みです。大事なことは、管理組合として管理費を絶対に諦めないことを区分所有者全員に分かってもらうことです。

普通の管理会社であれば、どこでも滞納管理費の遅延損害金計算ソフトを持っていますが、もしも持っていないようであれば、ダウンロードして管理会社に見せてやって下さい。その際、管理組合は、管理費の全額回収を絶対に諦めないことも伝えて下さい。管理費滞納が常態化しているマンションは、滞納する人はもちろん、役員の方にも、管理会社にも、管理費の徴収に対する意識が低い場合が殆どです。まして管理会社は管理組合、理事会の意向で動きますから、管理組合、理事会が強い意志を持っていなければ彼らは全力で回収しなければならないという気持ちにはなりません。管理費の全額徴収を実現するためには、まず何よりも管理組合の姿勢が重要です。それをきちんと伝えることができれば、管理費の滞納など発生しません。

管理費の回収を絶対に諦めないということは、一旦発生した滞納管理費は絶対に回収するという意味ですが、それ以前の問題として、そもそも滞納を発生させない仕組み作りをすることが必要です。管理費を絶対に諦めないとは、そのような仕組み作りをすることも意味します。そしてその具体的な仕組みについては、後述します。何れにしろ、滞納は発生させない。一旦発生したとしても全力で回収する。絶対に免除したり、割り引いたりはしない。まして時効が完成するまで放置したりすることは役員の怠慢以外の何物でもありません。管理会社にしても同様です。仮に管理委託契約の仕様に書かれているとおりの督促手続を行っていたとしても、数ヶ月も滞納管理費が回収されない状態を見過ごせる神経は同業者として信じられません。月次の会計報告において、滞納者の報告をするときに、督促しましたけど払ってくれませんでは済まない問題なのです。医師が、注射しましたけど治りませんとケロッとして言ったとしたら、病院自体を変えられてしまうでしょう。それと同じように、数ヶ月も滞納状態を放置できる管理会社など、私は生理的に受け付けません。もしもそのような管理会社に管理委託しているとしたら、すぐに管理会社を変更することをお勧めします。

B嫌な気分にさせられることを覚悟する

管理費の回収作業は、要するにお金の取り立てです。楽しみながらできる作業ではありません。借金の取り立てと同じです。取り立てる方も取り立てられる方も、嫌な気分にさせられます。管理組合としては、取り立てたとしてもプラスマイナスゼロです。遅延損害金を得たとしても、儲かるわけではありません。滞納する側は、もしかして免除してもらったり、割り引いてもらえれば儲かったと言えるかも知れませんが、管理組合にはそういう「楽しみ」もありません。まして相手は同じマンションの居住者、隣人だったりするわけですから、日常的にエレベーターで一緒になったりするわけです。取り立てる役になった人は、歩合で報酬が貰えるようなこともありません。全くの無償の奉仕です。多くのマンションで時効が完成したのしないのという段階まで滞納が進むのは、そのようなことにも原因があるのでしょう。取り立てられなくても、次の役員に引き継げばいいだけのことだとしたら、好きこのんで悪者になる人はいません。しかし、そのように管理費の滞納を放置することは自分の首を絞めることと同じであると分かっているからこそ、多くのマンションで管理費の滞納が問題になるわけですし、現にこのページをお読み下さっているのだと思います。嫌な役を引き受けた以上、やることだけはやらなければならない。そういう責任感のある方だけが、嫌々ながらではあっても、滞納された管理費の回収に取り組むのだと思います。

管理費の回収作業は、必ず取り組んだ人に嫌な思いを与えます。世の中に100パーセント請け負えることは少ないですが、これは請け負います。必ず嫌な思いをします。支払う側も請求する側も、必ず嫌な思いをすることになります。最初にそれを覚悟しておかないと、途中で放り出したりすることにつながりかねませんから、まずその覚悟をすべきです。相手が開き直ったり、脅迫まがいのことを言ったり、こちらの言葉尻を捉えて何とか支払を免れようとしたりと、さまざまなパターンはありますが、一応に共通しているのは、気分を害するような言動や、仕事を休んで裁判所に出かけるとか無駄な時間を費やされたりといった、砂を噛むようなめに会うことです。そのような思いをすることを減らそうとする方法があります。管理会社や専門家に依頼できることは依頼してしまうことです。そうすれば多少は気分を害することも減るでしょう。しかしそれも全てを引き受けてくれるわけではありません。やはり、大なり小なり、嫌な気分にさせられることは覚悟しておかなければなりません。

以上の3点が、まず最初に肝に銘じておくべき基本的な心構えです。それがないと、以下のノウハウも全て無駄になってしまうくらい重要なことであると考えます。